タイトル: DungeonUp
開発元: Clewcat Games
パブリッシャー: Black Shell Media
リリース日: 2014年11月18日
これ知ってる!
皆さんは「魔法の塔」というゲームを御存じだろうか。90年代半ばごろに公開されていたRPGで、10フロアごとに区切られた合計50階建ての塔の踏破を目指すゲームである。特徴は単に敵を倒していけばいいというものでなく、限りあるリソースを駆使し、どのタイミングでどのルートを通るか、どの敵を倒すか無視するかという詰将棋のような要素が強い点。トライ&エラーで少しずつ進め、先のエリア突破へはその前のエリアでどのようにすべきか、とじっくり考えながらプレイするスタイルが大いに受け入れられ、中国では一大コミュニティを築き上げた名作として知られる。
なぜそういう話をするかというと、このゲームがまさに「それ」だからである。
もちろん丸パk流用ではなく、それなりにアレンジは加えられているが、塔の区切りや鍵の色、アイテムの数値などは大体同じである。できるだけ受けるダメージを減らすようにルートを開拓し、時に回り道をして鍵やアイテムを確保するように動かなければならない。
という前提があったゲームなのだが、このゲームにはランダム性が設定されている。各ブロックに出現するアイテム数や敵の種類は決まっているものの、配置がランダムになっており、入手すべきアイテムの順序を考慮する必要が出てきたりする。このランダム性が想像以上に曲者で、面白いというより辛い要素だったりするのだが…詳細は後述。
元のゲームのバランスが良くできている分、ランダム性で失われた戦略性の部分は残念であるが、詰み防止というか多少の救済要素が含まれている。各ブロックのボスを倒すとソウルストーンというアイテムがいくつか貰える。プレイヤーが死んだ場合、一つ消費してそのブロックをやり直すことができる他、道中で拾えるアイテムではあるが、各種アーティファクトと交換することもできる。これにより、先に進むために赤い鍵が必要なんだけど手前の敵絶対倒せないよね、という詰み状態を回避できたりする。そもそもそういう状況が存在すること自体ダメというか、ストーリーモードでそれはダメだろと思うが。これはあくまで周回プレイをして先を勉強するときでも無駄にはならないよ、という製作側の思いやりなのだろう、と思うと嫌味にならないかも。
良くもあり、悪くもあり。
ゲームバランスやシステムについては「楽な時もある」で片づけてもいいのだが、シナリオや謎解きについてはそうはいかない。順当に先に進むだけでは真のエンディングには辿り着けないし、そもそもの難易度にも差し支える可能性もある。
進んでいくうちに、いくつか飛ばしているフロアがある(17Fや6F)ことに気が付くプレイヤーはどのくらいいるのだろうか。実はこのフロアがシークレットエリアで、巻物を使用して上のフロア(もしくは下のフロア)に移動することで到達できるが、その巻物自体が基本的に有限なので、途中のフロアで先に進むのが厳しいぜーといって使ってしまっていると、隠しアイテムが取れなくなる。炎の剣を獲得するのに必須なアイテムが隠しフロアに点在しているからだ。
真のエンディングを見るには手に入れるだけでは厳しく、各ブロックにある祭壇でお金を払いパワーアップする順番や時期を考えなければならない。どの祭壇でも強化額は一定で、効果が先に進むほど強いものになるため、序盤で強化しすぎていたらご愁傷様である。
ただでさえランダム配置で消費が激しくなりがちなのに、強化を先送りにしないといけないことで、配置によってはこんなん絶対無理だろと言いたくなる状況が出てくる。例えば攻撃力がそのフロアまでの強化分では足りないので、本来なら祭壇でパワーアップして倒すが、後々のことを考えると強化はしないで進む、そうするとサソリが硬すぎて攻撃が通らないとかそういったパターン。そういう状況を打破するのがソウルストーンなのだが、何度も言うがストーリーモードでそんなことさせんな。
一部のボスを倒すこと自体も謎解きが必要で、逆に言うと解けないと進めないという。わかっているならただの作業なので、ストレートに強い方がまだマシだった。ラスボスならまだしも道中のボスであり、謎解きも元ゲーのそのまんまであることから、元ゲーをプレイした人は何だアレかと思わされる反面、フォーラムでは「あれどうしたらいいの」の嵐になっているのが、詰みまたは投げポイントであることの証明である。
ストーリー性という話で言うとほぼないくせに、ストーリーモードを名乗り、ごく少数の思わせぶりなヒントを元にさあ謎を解いてくれ、となるのは、ある意味ではプレイを阻害しているだけではないか、と思えるほどだ。とにかく謎解きである各種アイテムを集めての炎の剣Forgeと、ボスの倒し方に関する話題で持ちきりなのだ。たたでさえランダム部分でギリギリ突破した後に、謎解きの「作業」でミスしたり、計算ミスで突破できないとなってしまったときのストレスはいかばかりか。
ただし、リプレイバリューがあるかどうかはともかく、何度か挑戦してベストなやり方はどうか、と試してみたり、運がいいパターンになるまで粘るなどの半ば意地のようなプレイをするだけの魅力はある。元のゲームのガチガチな戦略を、多少のランダム性で薄めてあるために、深く考えすぎないでその場の状況を活かすというカジュアルさと臨機応変さに生まれ変わったところはプラスと見ていい。ただ、ストーリーモードという観点からすると、固定の配置であるべきだろうと思う。そういうのはクリア後のチャレンジモードのようなものを解禁させてやるべきだったのではなかろうか。
真のエンディングを見るためには「こうしなければいけない」「ここでは強化はしない」「このアイテムは絶対に温存しなければいけない」となるものもあり、半ば制限プレイのようなことになってしまう。そのあたりの爽快感のなさや詰将棋なのに詰められないという点は噛み合ってないと思うが、元ゲーが出来がいいので、さほど気になることでもない。とにかく魔法の塔クローンとしてのカジュアルなゲームとして、現代風なアレンジ版としてなら悪くないのではなかろうか。
ユーザーマップとして魔法の塔のものも配布されているので、当時を知る人は当時のまま遊べる…かもしれない。当時のことは僕は細かく知らず、再現された別のモノをちょっと触った程度なのだ。
魔法の塔の二次的著作に関しては、常識の範囲で自由におこなってもらえればと思います。 Steamなどで関連作品を公開するのも自由です。
https://wwajp.com/mtower/
ということなので、このゲームやユーザマップも「そういうもの」として遊んでみてもいいかもしれない。それだけの価値はあるゲームだ。