タイトル: Painkiller Overdose
開発元: Mindware Studios
パブリッシャー: THQ Nordic
リリース日: 2007年10月30日
良作の出涸らし
元々のスタート地点がファン製作の MOD で、これなら1本作れるやんけと目を付けられて商品化という流れだったらしい。ファンと言ってもちゃんとした商業ゲームを出したスタジオ (Mindware Studios) だし、資金も提供を受けたそうなので、ボリュームとしてはシリーズの拡張パックの中でも大型のものになっている。
ただ、マップ数のバラエティはあるものの、基本的な素材は概ね使いまわし。新しい敵や武器などはあるものの、大まかな部分は本編と同じものなので、目新しさや新鮮さはあまりない。それどころか本編であった良さが失われているところも多々あるので、ゲームの出来栄えとしては劣ると言わざるを得ない。この点はいいよねという部分が本編で褒めたあたりなので、この作品ならではの良さや見どころが正直無いと思う。本編での欠点を解消していたら話は違ったのだが、残念ながらそうはなっていなかった。
クオリティの乱高下はするものの、そもそも何のゲームなのかわからないほどのバラエティさはあるし、強い武器も増えているし、シークレットも数自体が減ってマップ内移動に躍起にならなくても良くなったような気もする。決して悪いことだらけではないのだが、これは決してこの作品ならではというわけではない。painkiller というゲーム自体が闇鍋みたいなもんだという気もするが、それに輪をかけたような統一感のなさ。それが本編より出来が悪いので、全体的に「本編ではボツにせざるを得なかったアイデアを寄せ集めたのではないか?」と思ってしまうほど。
人を楽しませる作りではない
大元の撃って避けるゲーム性はすごくいいという話は、初代のときもしたし今回もした。ただそれを発揮するようなゲームデザインにはなっていない。多岐に渡ってそういう点があるので、プレイしていてこのゲームおもしれぇ!となる状況があまりない。
第一にマップが広くなって、ロード時間がかなり長くなった。前作では長い長いと言われていたが、自分の環境ではというか、今時の環境ではかなり短くなってはいた。それが今回はかなり気になるステージがちょくちょく出てくるほど長くなった。エンジンの都合でロード時間が長いとかいうなら短いステージを作ればいいのに、むしろ巨大化してるのはどういう判断なのかよくわからない。
ロードが長いことに関連した話になるが、シークレット探しで即死スポットに飛び込んでしまった場合、前作よりはるかに長いロード時間を経て再開しなければならないので、そもそも探す気にあまりなれない。上のような階段っぽい場所でも水に入った時点で即死するので、前作で何度かあった「スタート地点の後ろが実は侵入できて、その先にシークレットがある」というケースかと期待させておいてゲームオーバーを誘発する。このステージでは、回復アイテムの先に同じような階段を配置してたりもするので、プレイヤーのミスを誘おうとしてるとしか思えない。他のステージでもいけると思える水で死んだり、無理っぽそうなところが正規ルートだったりと行ってみないとわからないが、死んだら長い再ロードが待っている。
敵の出現パターンにもストレスになる要因がある。前作では敵は一度トリガーが引かれた場合順繰りに規定数出てくるか、今いる敵が全滅したときに再度同等数出てくるなど、シンプルな構成だった。出る場所が概ね決まっているため、迎え撃つという形をとりやすかったので、武器の使い分けなども考えやすくできていた。
今作ではがらりと変わって、部屋に敵が湧くとした場合、ちょっと真ん中らへんに進んでから前後左右に湧くような形式が増えた。とにかく後ろに出てくるので、敵が出て一旦引いて敵を揃えて対処するという行為が取りにくく、不意打ちダメージを受けがちになった。さらに遠距離攻撃やワープも多用する敵が増えたため、前に進みながらも敵が出たら後ろを警戒せざるを得なくなった。
単純に後ろに出現することがある、だけならまだいいのだが、敵がスポーンするポイントに近づいたときに初めて出現するようなケースも多々ある。例えば敵が出て、後ろにいないことを確認して下がった途端近くから敵が湧いて攻撃された、なんてことが非常によくある。攻撃されるだけならまだいい方で、自爆ダメージが絡んでくる場合にはゲームの面白さを損なってくる。今までいなかった敵に対処するために気軽に爆発物を使えないというのはさすがにあってはならないと思う。あくまで体感なので、実際は少し時間をおいて後ろに出現するような仕組みなのかもしれない。ゲームを始めてすぐのレベル2でワープを多用する敵が出てきたので、出現の仕方がおかしいとか遠くの敵が出てないといった印象になっているのかもしれないが、実際にこのステージは色々とおかしい。
戦闘に関して致命的なのが敵が妙に硬いということ。本当に間近でショットガンを撃たないと倒れない敵がゾロゾロ出てくる。そういう敵に限って小さくちょこまか動くので、割と芯から外れやすいのでショットガンを連射というスタイルになってしまう。そしてそれを後押しするかのように落ちている弾が少ない。特に武器が増えた影響なのか、全種類の弾が手に入るボックスが滅多に落ちていないので、どれかに絞って使うとすぐに弾切れする。その弾もこのマップにはこの武器という感じでものすごく偏った配置で、せっかく8種類もあるのに大っぴらに使えるのは2種類くらいしかない。部屋の4隅に置かれていればいい方で、なんでこんなところに置いたのという辺鄙なところにポツンとあったりする。マップをデザインした人は疑問を持たなかったのだろうか。
もうひとつ重大な欠点として、敵の死にモーションが何種類かあること。それ自体はいいことかもしれないが、その複数の中に倒れたことがものすごくわかりにくいモーションが混ざっていることが問題。ただでさえ弾が少なくて敵が硬いのに、死んだかどうかすら確認できない動きをされると余分に撃ってしまうことが多発する。残しておくと厄介な遠距離攻撃系や、1発が重い敵などもいるので、乱戦の中でそんなことをされたらたまったものではない。乱戦における爽快感のなさがこのゲームの評価を下げていると思う。難易度が上がっていると言えばそれらしいが、ストレートに言えば嫌がらせによってこちらが死にやすくなったというだけ。
文句ばっかり言ってる気がするが、今作に関しては明らかに良い点より悪い点が目につく。というより良い点を上書きするように悪い点が存在しているのが問題。今までも文句をつけてきたスローテンポになる要素である、敵を倒した後ソウルになるのを待って取るという待ち時間に影響する要素がいろいろと増えている。たまに敵の死にポーズがカットされるのか、死んですぐにソウルになるケースがあり、これはこれで問題。毎回そうならまだいいが、かえって長くなる要因としてガスを残して死んでいく敵の存在。これによって死体が変化するまで近くで待機、とはいかず距離を置かなければならなくなる。あまりに距離を置いてしまうと、取りに行くまでに最初に出していたやつが消えていたりするので、意図的にソウルを取る行為を妨害しているとしか思えない。テンポは悪くなるがメリットもあるという賛否両論点だったものをさらに悪化させているので、ここの製作会社の考え方を疑ってしまう。
視界を遮りダメージも受け、行動も阻害されるこのガス攻撃によって引き起こされるもう一つの問題が、プレイヤーであるベリアルの喋り。そもそもコイツはステージが始まったらなんか急に長文を喋りだしてうざい。上記のガスを吸い込むと「カァーゲッヘゲッヘ ゼェーヒィー」と耳障りな声を上げる。頻繁に。彼の声は正直に言うと聞いてて気持ちのいいタイプの声ではないので、通常時でもうるさいのがやたら耳にさわる。ソウルを拾うと「Yummy」、敵を倒していると「Tastes like chicken.」「Next!」、ロケットランチャーのライフルで撃つとたまに「アアアアアアー!」と喚きだす。意図的にオフに出来ないので、この声が気に入らない人はずっと気に入らないまま過ごすことになる。
クソゲーではないが二度とやりたくない系
本編は欠点はあれど良作間違いなし、追加パックは文句を言いたいがクソではないまずまずでいいステージもあった。じゃあこれはとなると、正直に言うとクソに片足を突っ込んでる感じがプンプンする。全体に漂う意地悪さと盛り上がりのなさ、マップのバラエティさ?に伴う統一感のなさ。上でも言ったが出来損ないのボツアイデアを一本にまとめた産廃みたいな印象すらある。
一部のアイデアは面白いし一部のステージはやりごたえがあるが、そこ以外の不満点が目についてしまって勿体ない。意地の悪い配置でなかったり、敵を撃って倒すというシンプルな目的が達成されるステージなら割と楽しめるが、まちまちなのでそのつまみ食いが難しくなる。ボス戦が見てわからんというレベルの酷さではないので、繰り返し遊んでいれば先に進めるようにはなっているが、その道中を楽しめるかというと個人的には違うと言い切れる。
Chapter 1~3 がある中で2が割とまともなエリアが多い印象。見通しが悪いとか進む先がよくわからないとか、敵が厄介とかそういうマイナス面があまりないというだけだが、このゲームにおいては良い方に入ると思う。Riot や Field Ambulance は雰囲気もよく難易度も不当に高くない。chapter3 の Studios も寄せ集め感はあるし敵も嫌な攻撃をしてくるものの、出てくる敵のバラエティさや奇抜さがなかなかに面白い。カードを狙うと難易度は上がるが、そうでなければ素直なアクションステージとして楽しめる。
問題はこれのメタスコアが65点で、今後の Re シリーズは全部40前後ということ。これからが本当の地獄だ。