タイトル: Killing Room
開発元: Alda Games
パブリッシャー: Alda Games
リリース日: 2016年10月21日
一言で言うとローグライク FPS。部屋を進み、敵を全滅させるとドアが開き次の部屋に進める仕組みのアリーナタイプのローグライク。道中の分かれ道はあくまで寄り道であり、ボスだけを倒すならまっすぐ進めばすぐに到達できるようになっている。メインルートにはアイテムなどはほぼなく、脇道にショップやアイテム、攻略に必要なものが置いてあるので、よほどの理由がなければフロア全体を探索する形にはなるのだが。
このゲームの最大の特徴は「テレビ番組」のシチュエーションであることであり、「プレイヤーが危険な状態になる行動をすれば人気度が上がる」「生き延びるための行動を取れば人気度が下がる」などの視聴者人気を気にしなければいけない点にある。高い人気を保っていると、ステージクリア時にいいアイテムが視聴者から送られてくることがあり、逆に人気度が低いとバッドアイテムを押し付けられることもある。道中を楽にするには人気度を下げながら状態を整えることも必要だが、人気取りのためにわざとバッドアイテムを取得するという選択が必要な場合もある。時には命を懸けてみるのも必要になる。
戦闘は割とシビアめの設定で、弾薬が貴重なため撃ちまくって爽快ということは無い。敵を倒す楽しみというより進むために仕方なくという側面が大きい。ただし、敵をまとめて倒す・連続して素早く倒すと人気度がプラスされるので、余裕があるときなどは引いてまとめて、爆発物や強い武器でまとめて倒すという手段が有効となることも。 敵とボスの種類は少なく、先に進んでも同じロケーションが出てきたり、同じキャラのちょっと色替えや強化版みたいなものしか出てこないので、繰り返しプレイのモチベーションが薄いのが辛いところ。
ボスを倒すと永続効果の「アイテムスロット+1」「能力アップ」等々のアイテムが手に入るので、とにかく一度でもボスを倒すとその後の周回が楽になる。ただし、一度きりなのでそれ以降はボスは単にフロアを進むために置かれた障害でしかないのがマイナスか。
トラップの類は部屋に敷き詰められているトラップ部屋以外、初めから見えているトラばさみと踏むとダメージのトゲくらいしかないが、このトラばさみが踏むと状況によっては致命的になる。時間で解除されたりすることはなく、下を向いてアクティベートを連打という戦闘から完全に切り離された動作を要する。逃げ撃ちの最中や、時には囲まれるギリギリのタイミングで踏んでしまうときもあり、その場合はほぼ死ぬ。これがせめてレバガチャで抜けられるとかであれば不満はあまりなかったかもしれない。
全体として難しめに作られているのは「プレイヤーが命を懸けてなんかやってるのが楽しいと思う人たち向けのテレビ番組」リスペクトであり、ショーであるからというところはあるのだが、それがゲームの面白さであるかというのを改めて見ていこうと思う。
発想は良かった
人気とリスクを天秤にかけるところは、TRPG のパラメータのような匙加減だと感じられて、最初のうちは色々と気を遣って高く保とうとしたり、あまり気にせず有利に進めて不人気を貫こうとしたくなる。しかし、ある程度プレイすると自由度もへったくれもないことに気が付く。
何せ、普通にメインの部屋に入るだけで-6されてしまうので、元に戻すためにサブの部屋に入って敵を倒さなければならない。うまいことマルチキルや爆発物キルをとったとして2部屋くらいは復帰に必要になる数字。という前提を踏まえてメインルームを3部屋渡り歩くとして、1フロアごとに-20はされることとなる。実際はどんどん広くなるので、それどころのレベルではない。
簡単にクリアするというが、敵がそれなりの数出てくるので普通に撃って倒していると弾が足りなくなる。弾を手に入れるとなると、ランダムで手に入るものか、人気度と引き換えに手に入れるか、ランダムで手に入る金と引き換えにランダムで出るショップで1マガジン分買うしかない。根本的に弾が足りないという仕組みなので、弾数無限のピストルで走り回りながら倒さなければならないので、節約プレイというか縛りプレイということになる。
寄り道の意義が、強い武器を手に入れるだとか、楽に進めるための何かを手に入れるとかではなく、「しないと最終的に辛くなるので、今辛い思いをしておけ」というただそれだけになっているのは惜しい。ランダムでちょっと有利不利とかそんな次元ではなく、数値が上下すればストレートに反映されるほどのバランス感覚になってしまっている。なので、ご機嫌取りを強要されるだけのシステム。
たまーに出てくるこういうリスキーだが数値がおかしな上昇をするボタンや、助けるだけで+20されるアヒルちゃんなどが出てくればその分アイテム確保に使えるのだが、出ないとどんどん数値が減っていくことになるのは想像に難くないはず。ロックピックで棺を開けて、開けた時点で-5されるのに中身がランダムとかいうなかなかにイカれたシステムなどもあり、安易な行動は取れない。マイナスが過ぎるとボスを倒した後にマイナスアイテムが送られてくるなどのリスクまである始末。不人気だからってそんなにしなくても。
こういった理由から常にマイナスにならない程度の人気度を確保しておくことが重要で、ギリギリでステージをクリアしたぜ、という時にかなり厳しいことになる。リスクを承知で稼ぐ、とか言う話でなく、1フロアごとになにかマイナスされていくということになるだろう。敵も強くなっていくので、どんどん厳しくなる。プラスアイテムやマイナスアイテムは100種類以上あるらしく、これらの引きによってマイナスが多くなっても戦えるのだが、確実に入手する手段はないので、ここも難易度を引き上げる要因になっている。
せめてプレイヤーが体を張ったら人気度は下がらないようにしてくれれば、プレイの制限は少なくなったと思うのだが、現実はそうではないのである。例えば棺はピッキングなら人気度が下がらない代わりに、支配人に開けてもらうとマイナスになるとか、そういう匙加減も可能だったはず。そうすればもう少し人気度に猶予が増えて、いろいろな武器などを入手する経路が確保できたはず。このロックピックはそもそも「店で買う」か「ランダム入手」なのにどういうことなのか。これで開けた中身がピック1個とかそんなことまであるという。
惜しいゲーム
結論として、難易度が高いゲームというより不便なゲームという印象が強くなる。難易度の高さは弾の不足によるところと、不利益になることを強要するものであり、例えば道中でピストル以外の武器を使うと途端に簡単になる(道中だけは)。ボス戦用にショットガンがあれば割となんとかなるので、使ってもいいと言えばいいのだが、いざ足りなくなるとどうすんのという話になる。初めてきたフロアのボスならできるだけ温存して臨みたいので、大盤振る舞いはなかなかできないし、見慣れたボスならめんどくさいだけでしかない。
ボスをスルーする方法などはないので、毎回ボスを倒さなくてはならないし、カットできるとは言え演出を見ないといけない。これもまたローグライクとしてなかなかつらいところで、ランダムで色々状況が整っていないこともある状況で、毎回固定のボスが出てくる。楽だったり辛かったりしようがなんだろうが、必ずエンカウントする。初見でピストルオンリーでも勝てると言えば勝てるボスが大半だが、時間がかかるし、ミスをすると押し切られることもあるため、ボス用の武器などをなんとかして用意しておきたい。手に入れる手段がほぼないのだが。
マイナスアイテムも能力が下がる程度なら許容できるが、ステージクリア後の能力振り分けポイントが大きく下がったり、視界が傾いたり半分見えなくなったりなどの致命的なものまで多数ある。一度手に入れてしまったものはどうしようもないので、そういうものを引かないように避けることに終始する。例えばランダムアイテムの要素はできるだけ利用しないとか、そういう方向性でプレイヤーが動いてしまうので、せっかくの要素がマイナス方向にしか作用していないということに繋がる。マイナスアイテムが無くてもただでさえ縛りプレイなのに、さらに縛らなくてはプレイが覚束ないほどの追いつめられた状況になったら、もう死んで次の周回に入る、という形をとる人が大半だろう。
やっていて楽しくないというわけではないのだが、ローグライクゲームとして楽しむというのは全くお勧めしない。無理難題をクリアしてやったというカタルシスは得られるかもしれないが、どうせゲームで遊ぶならもっとサクサク進めるゲームをやったほうがいい。とにかく行動が制限されるゲームという点はどんなプレイをしようとも変わらないので、そこが許容できる人ならいいかもしれない。もしくはリアルな賭博迷宮録カイジのようなロールプレイをしたい人向け。