PCゲーム レビュー

[Review]I Hate Running Backwards

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タイトル: I Hate Running Backwards
開発元: Binx Interactive, Croteam Incubator, Croteam
パブリッシャー: Devolver Digital
リリース日: 2018年5月22日

 

ローグライト+縦スクロール+シューティング

SeriousSamシリーズやDevolver Digital販売作品のキャラクターが多数登場するボクセルグラフィックのシューティングゲーム。シューティングゲームは自機が下側で、上から敵がやってくるのを迎え撃ちながら上に進むというものが多いが、このゲームは下から敵がやってくるのを後ろ向きに走りながら迎撃するスタイルをとっている。具体的にそれにどんな意味があるのかはわからないが、たくさんのキャラ出演ということで、後姿より正面姿がよく見えた方がいいと判断したのだろうか。

それはさておき、ゲームの基本ルールは一般的にシューティングゲームと呼ばれるものと変わらない。武器は2種類を保持することができボタンで切り替え可能。雑魚散らし用に連射の利くアサルトライフル系、範囲の広いショットガンや投げナイフ、ボス戦用にロケットランチャーや拡散率の低いショットガンなど、目的に合わせたものをチョイスすることが攻略の基本形となる。無駄に連射し続けると弾切れを起こしがちなので、身を守るためにはやむを得ないのだが、弾薬管理と補給が割とシビアなバランスになっている。そういう意味でも「ショットガンとロケットランチャーだぜ」のような組み合わせはあまりよろしいものではない。

そこで登場するのがこの近接アタックである。クールタイムが長い上範囲は狭く当てにくいが、弾薬を消費せず全方向に攻撃ができるなどのメリットがあるので、弾薬管理・防御など様々な用途で使うこの攻撃に慣れておかなければならない。またロケットなどの特定の攻撃を反射、ゲーム中のオブジェクトのほとんどを壊すことができる。

オブジェクトを壊すことで、破壊したブロック数に応じた経験値(黄色いボクセル)が溜まり、一定数溜まるとランダムで選ばれた3つのPerkを選択して取得できる。射撃速度が上がったり、弾薬の残量が増えるなどの攻撃面を重視するか、ライフ回復アイテムが出やすくしたり、回復量を上げたりなどの防御面を重視するか、プレイヤーの選択により様々。もともとのキャラ能力を活かしてさらに高めるか、欠点を補うかという戦略も戦況に大きくかかわってくる。

ステージ数は少なく1ループが短いが、難易度自体は高めでやりごたえがある。先述のボス戦と雑魚敵相手の武器の持ち替え、残弾数のやりくり、レベルアップ時の選択などでプレイヤーの能力が大きく変わることで、リプレイ性が高められている。そしてステージもランダム生成により、その対策がしっかりと機能するかどうかも差が出てくる。一度ボスを倒すと、そのステージまでスキップでき、ボスに応じたcurse(難易度アップ要素)が解除される。比較的エクストリームな方向には舵が切りやすいので、通常難易度で余裕だよと言う人にもバリエーションのあるプレイを提供してくれる。ハイスコアによるランキングなどもありやりごたえは十分だ。

 

ストレスになりやすい仕掛け&ゲームシステム

いわゆるローグライトのシステムがあまり効果的ではない印象を受ける。残機制ではないので、ライフが無くなるとスタート地点に戻されてしまう。各ステージには次のステージに進むワープが用意されており、クリアしたことのあるステージまでは飛ばして進むことができる。なのだが、ステージを飛ばして行った場合、初期装備と初期レベルで戦うほか無いのである。もちろんクリアは十分にできるといえばできるが、Perkによって戦闘能力にかなり差が出る。しかもMkIIなどの高レベル武器が出るのはいくつかステージをクリアするか、もしくは累積経験値か何なのかはわからないが、何らかの条件を満たさないとまず出てこない。そのため、ラスボス連戦のために1面だけクリアするといった稼ぎ作業を挟まないと厳しい。

そしてこのシステムが一番噛み合ってないと思えるのが、落下死の存在。1面で建物を壊して経験値を稼いだり、経験値アイテムの黄色い壺のようなものが隠れていたりと、破壊できることに意味を見出させておきながら、2面でいきなり落下死が存在するエリアが出てくる。そのため、何も考えずに壁を壊そうとしてそのまま死ぬとか、敵の攻撃を避けたら落ちたという事故が多発する。ランダム生成なのであまり出ない場合もあれど、こういう仕掛けが存在しやすいステージは飛ばそうと思ってしまう。

というより1面以外は何らかの理由で即死の仕掛けが存在しうるので、正直なところ「手応えのある難易度」という側面は薄い。2面5面は落下死が起こりやすいマップ生成だし、3面では回避はしやすいしインジケータも表示されるが、触れると死ぬWerebullが出てくる。また確率はあまり高くないが、ビークルに乗るエリアが生成されることがある。このビークルの操作や仕掛けについて一切説明がないのに死にやすいor即死の危険があるコースを遊ばされる。

最終面でもボス戦はヘリで、ボスの弱点やなんやらが分からないまま放り出される。確かにSeriousSamシリーズでまともにガチンコ勝負できるボスは少ないとはいえ、こういうところで無駄に原作再現しなくてもいいだろと言いたくはなる。このボスを倒した後第二形態と戦うので、このヘリと体力が別計算になっていることだけが救いか。

そして何よりの問題として「真下にしか撃てないが敵が斜めに撃ってくる」ファミコン時代のような操作性。そのためこちらが左右に移動しなければ敵を全滅させることが難しい。難しいのにプレイヤーの足がかなり遅いため、回り込むだけでもかなり厳しい操作を要求される。しかし全部倒すのを諦めると、敵の接触によりダメージを受けるということになる。近接攻撃で撃退すればKamikazeだろうがなんだろうがダメージを受けないので、いっそ何もせずに引きつけてハンマーで殴るという、シューティングとしてあるまじき行為をメインに戦うことになってしまいがち。もちろん投げナイフなど前方90度くらいに攻撃できる武器もあるが、逆に言えば1枠を使わなければならないということになり、バリエーションなどと言っている場合でなくなる。

そのため、「敵やオブジェクトをバリバリ倒すゲーム」でなく、「できるだけ長い時間を生き延びるゲーム」ということになる。もちろんいい武器やPerkを引いて、敵が正面から来やすいエリアに到達すれば、正面から来る敵をなぎ倒す爽快感は味わえるが、基本的にはそういう状況はほぼない。例えるなら「グラディウスをスピードアップせず、レーザー縛りでプレイしてみよう」という感じの動きのような気がする。決してつまらないとかやりごたえが無いとは言わないが、不自由なプレイであることは間違いない。結論としては「ローグライトとシューティングがそれぞれ殺し合っている」という印象。どちらかに絞るべきだった。すぐ死ぬのに強化しないと戦いづらいのだ。

配信向きの機能などもあると売りにしていたので、いかに早く、わかりやすいミスをしてくれるかというところに焦点を当てたのだろうと思われる。それがシングルプレイでいい方向に働いているとは、私は思わない。

総評

ゲームの感想としては決して出来は悪くないし、短いステージの繰り返しながら、思いのほか熱中していると言えばそうなのだが、心の底から楽しんでいるかと言えばそうではないと思う。基本システムがシューティングで、途中でセーブや中断をするようなシステムでもないので、空いた時間にサクッと遊ぶとか、敵をバリバリ倒したいとかそういう欲求に沿ったゲームでは無い。高難易度に向けた設定変更(Hardcore/curse/loopによる2週目)などが豊富なため、自分の限界にチャレンジするという方向で、繰り返しプレイすることで、ハイスコアランキングを目指すという感じか。

個人的にはそういう楽しみ方はあまり得意ではない。あくまでローグライク系のシステムなため、武器やPerkによってはバリバリと敵を倒すことも出来なかったり、弾がなくなりハンマーとピストルメインということになったりと言うこともある。そういうある意味捨てゲーというパターンではモチベーションも下がってしまう。最後のボスでは必ずビークル戦からの連戦というのもあり、ガチンコで撃ち合う要素は最終的には希薄になってしまう。

人にお勧めするか=No 面白いか=Yes 楽しめるか=微妙にno くらいの感じ。毎回変わらず面白いですよと言いづらいのがローグライクの辛いところだろうが、「どういう意図でローグライト感を出したのか」が分からなったので、その点によるマイナスが大きいかなと言わざるを得ない感じ。特に死んだら終わりシステムで回復アイテムが滅多なことでは落ちていないことが難点。破壊できるオブジェクトからランダムで出てくるというシステムなので、生き延びさせる気がないというバランス調整になっている。配信でもプレイヤーを早く殺すための介入システムなどがあるようで、公式設定が「長く生き延びるよりきつい場面で死んだ方が盛り上がるでしょ」というバランス調整を良しとしているようだ。このあたりで割と興味を失ったところは否定できない。

参考程度に以下に動画を載せておくことにする。

保存先の指定がダメだったのか回線の問題かはわからないが少しガクガクしたところがあるので、参考程度ということで勘弁してください。

 

 

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